現在、日本国内ではさまざまな産業の現場や生活シーンで、人手不足解消や業務効率化の対策として、AIなど最新技術を備えた各種ロボットの導入が進んでいます。
しかし、普及が先行している海外市場とは異なり日本国内は成長過程の市場のため、「自動搬送ロボット」の定義や「次世代ロボティクス」の導入効果については、その実態が正しく理解されていない部分もあります。
そこで今回は、日本国内市場で見られる誤解とも言える認識について活用事例を交えて解説し、物流ロボットの活用と導入効果を正しく理解するためのポイントについてご紹介します。
※本記事では、日本国内市場で発信されている物流ロボット業界の一般的な情報を考慮しつつ、ギークプラスの見解も交えながら作成しています。成長過程の業界のため、日々変化する市場の中では情報も絶えず変化するものです。そのため、一部解説内容や言葉の定義について、日本国内市場で発信されている情報とは差異が生じることがありますのでご了承ください。
日本国内の物流ロボット市場をけん引するユニコーン企業として
中国で2015年に創業したギークプラスは世界シェア首位のユニコーン企業です。その日本法人として2017年に設立された日本法人ギークプラスは、国内最大手の地位を確立してきました。
ギークプラスが提供する自動搬送ロボット(EVE)の販売・導入・保守サービスや、物流関連のシステムソリューションは、国内大手物流プレイヤーに相次いで導入されており、企業価値向上に貢献しています。
世界中で物流ソリューションを提供するギークプラスの会社概要、革新的な技術と優れたサービスについて詳細は下記ページをぜひご覧ください。
日本国内市場で注目されている自動搬送ロボットの活用例と導入効果のギャップ
現在、日本において、自動搬送ロボットは、物流倉庫や製造業の工場、大型商業施設や飲食店、病院などさまざまな現場で活用され始めています。
例えば、ニュース報道や業界解説のWebサイトなどでは、次のような事例が注目を集めています。
自律走行型の配膳ロボットとしての「AMR」
自律移動が可能なロボットが、お客さんが注文した料理などを運ぶ「配膳ロボット」として大手飲食店に導入されています。人と人との接触を避ける新型コロナウイルス感染症対策や人手不足解消対策として注目を集めました。
こうした配膳ロボットは次のような特徴があることから、日本国内市場では「AMRロボット」として呼称されることがあります。
- 人の作業を代行して作業負担を軽減する
- 店内の移動マップや自分の位置をロボット自らが把握して移動する
無機質な印象を抱きやすいロボットに、音声機能の搭載や動物を模した形状を取り入れることで、斬新さやエンターテインメント性を演出するなどし、飲食業の新しいサービス手法として話題となりました。
ただ一方で、配膳ロボットとしての「AMR」には課題も挙げられています。例えば、次に挙げるような課題です。
- ロボット導入の投資コストが高い
- 定期メンテナンス費用も含めたトータルコストを考えると、人を雇用したほうが安価で済む可能性がある
- 障害物回避機能など安全面での技術課題がある
こうしたことから、本質的に人手不足を解消するためには、店舗のオーダーシステムを改善したり、Web予約システムを導入したりするほうが費用対効果が良く、業務効率化につながりやすいといった見方も出てきています。
つまり、日本における配膳ロボットとしての「AMR」は、本来の目的や導入効果よりもエンターテインメント性や真新しさに注目が集まってしまい、自動搬送ロボットとしての可能性を発揮するには十分な検証がなされていない状態と言えるのかもしれません。
人の作業を補助する協働ロボットとしての「AMR」
物流倉庫や製造業の工場などで導入が進む自動搬送ロボットは、人手不足対策や業務効率化を図るものとして注目されています。特に、人とロボットが協働で作業できる協働ロボットとしての「AMR」が普及し始めており、日本国内では「次世代AGV」と呼ばれることもあります。
この背景には、AMRが次のような特徴を持っているためと考えられます。
- ロボットが走行するためのガイド設置が不要
- 決められたルート走行ではなく、センサー感知機能で自律走行ができる
- 人とロボットの作業領域を区別し、人の作業負荷を軽減・サポートできる
例えば、倉庫内のピッキング作業では、これまで人が行っていた運搬作業をタブレット付きの自動搬送ロボットに任せることで、人の移動時間がなくなり作業負担を軽減できます。安全面でも、重い荷物を人が運んだり、細い通路を人が歩いてケガをしたりするリスクがなくなります。
そのため、日本国内では現在、次に挙げるような導入効果があるとよく言われます。
- 大幅なレイアウト変更の必要がなく、人とロボットとの協調作業が可能
- 人の移動時間を減らし作業負担を軽減する
- 人の作業負荷が減ることで業務効率化を図ることができる
ただ一方で、人と協働できる点にスポットが当たったことで、協働ロボットとしての「AMR」には、次のような課題を指摘する見方も出てきています。
- 人とロボットが協調作業をする領域が存在することで、かえって生産性低下を招く
- 人が行っていた作業を補助する効果はあるが、全体の生産性向上には寄与しにくい
こうしたことから、日本国内において、人とロボットとの協働という観点で導入される「AMR」は、本来発揮できる自動搬送ロボットの導入効果の一部に限定されているのが現状と言えるでしょう。
本当に生産性向上に寄与するのはAMRなのか?
AGVやAMR導入が日本国内で注目されているのは、人手不足解消や業務効率の改善、ひいては全体の生産性向上に寄与すると期待されているからです。しかし一方で、AGVやAMRがどのようなものなのか、その機能や特徴が正しく理解されているわけではありません。
ここからは、進化するAGVとAMRの特徴や導入効果について詳しく見ていきましょう。
進化するAGVとAMR、その機能や特徴の比較
これまで、「ガイド設置が不要かどうか」「自律走行が可能かどうか」といった基準で区分けされてきたAGVとAMRですが、最新の自動搬送ロボットは、その単純な基準だけでは分類できなくなってきています。
機能と特徴を分類すると、下表のようになります。
AGV | AGV | AMR | |
---|---|---|---|
走行タイプ | 有軌道タイプ | 有軌道タイプ(ガイドレス) | 無軌道タイプ(ガイドレス) |
走行方式 | ガイド方式 | 自律走行+ガイド方式 | 自律走行方式 |
走行方式の特徴 | 磁気テープなどのガイド設置が必要 | QRコードなどを感知して走行するなど、従来のAGVより柔軟性が高い | ガイド設置不要で障害物を感知して自律走行が可能 |
導入コスト | 比較的安価 | バランスが良い | 高額 |
日本国内市場では「自律走行できる方式=AMR」という定義が定着してきましたが、上の表からも分かるように、自律走行も可能で柔軟性を備えたAGVもあります。
そのため、単純に「AGVはガイドが必要で自律走行ができない」と決めつけると、誤った判断をしてしまうことになります。各社によって異なる言葉の定義があることを認識し、その自動搬送ロボットがどのような機能や特徴を備えているのかを、正しく理解することが重要です。
AGVよりもAMRの導入効果が高いとは一概には言えない
日本国内にはAMRよりも前に、有軌道タイプのAGV(ガイド設置が必要で決められたルートを走行する方式)の認知が広まりました。そのためか、日本国内市場では、次のような評価がなされることがあります。
- AGVは古い技術であり、AMRは新しい技術(次世代AGV)である
- 新しい技術のため、AMRのほうが導入効果やメリットが大きい
実際、インターネット上には、こうした解説をする情報があふれています。しかし、配膳ロボットや協働ロボットについての活用例で解説したように、日本国内で呼称されている「AMR」には、自動搬送ロボットの持つ可能性を活かし切れていなかったり、最適な導入効果を得られていなかったりするケースも散見されます。
人手不足解消や生産性向上を目的にしながらも、次世代ロボティクスの可能性の一面だけを捉えているのが、現在の日本国内市場の状況と言えるのかもしれません。
とはいえ、このことは成長過程の市場ではよく見られる状況で、日本国内で事業展開する各社がさまざまな種類の自動搬送ロボットを開発・提供して、切磋琢磨していることが要因の一つと考えられます。今後、日本国内市場が成熟することで、各産業での自動搬送ロボットの導入効果の評価が適切に行われて、情報が整理されることが期待されています。
ギークプラスの製品ラインアップから見る自動搬送ロボットのメリット・デメリット
グローバル展開の実績が豊富なギークプラスでは、AGVやAMRなどの次世代ロボティクスの特徴と、メリット・デメリットをどのように捉えているのか。ギークプラスの製品ラインアップをもとにご紹介します。
ギークプラス製品 | メリット | デメリット |
---|---|---|
AMR ※国内未発売 | ・作業生産性が2倍アップ ・最短、数カ月で導入、稼動開始可能 ・比較的安価で導入できる ・既存レイアウトに大きな変更なく導入可能 ・人との共存作業ができる | ・人の補助作業となり、全体の生産性を大きく向上できない ・大型商材には向かない ・人と共存するため、機器の摩耗が早くランニングコストが入れ替えコストがかかる ・入荷効率が上げにくい |
AGV(自動棚搬送ロボット) ※従来製品 | ・作業生産性が5倍アップ ・約4年間で投資コストを回収可能 ・他の大型マテハンに比べて安価で導入できる ・幅広い商材サイズに対応可能 ・固定アンカー(ガイド)無しで稼動する柔軟性を備えている | ・セットアップのために既存レイアウトをリセットする必要がある ・棚の高さは2.8mまで ・500坪以下など小規模現場には導入効果が得にくい |
ギークプラスでは、日本国内市場で現在定義されている枠にとらわれず、物流業界の課題を解決するための最新ロボティクスソリューションを提供しています。
進化し続ける最新の物流ロボット技術とギークプラスのサービスについては、下記のページで詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
人手不足と機械投資のリスクを解決する、真の次世代ロボティクスの提供を目指して
ギークプラスは日本国内において物流ロボット市場への参入時期が早く、「ギークプラスと言えばAGV」という国内評価が確立されていると言っても過言ではありません。そのため、ギークプラス製品は日本国内では「AGV」のカテゴリとして紹介されることが多いようです。
しかし、今回ご紹介したようにAGVの技術が古いものになってしまい、生産性向上に寄与しなくなったわけではありません。ギークプラスが提供するAGV(自動棚搬送ロボット)は、固定アンカー(ガイド)無しで稼動する柔軟性を備えていて、導入コストもバランスの良いサービスです。
また、ギークプラスではグローバルに展開してきたこれまでの実績や経験をもとに、お客さまにとって真の課題解決手段となるご提案を第一に考えています。まずはお話をお伺いして、お客さまの現場実態や経営課題に即した最適なソリューションのご提案をさせていただきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。